インシリコ毒性スクリーニングに関するみんなの広場


 

          
 CBI学会に新たに設立されました「計算機毒性学(Computational Toxicology)」研究会は、日本で最初の計算毒性学研究会として、多くの方々の注目を浴びております。

 「計算毒性学」研究会では化合物毒性に関する様々な問題を、研究会に参加された多くの方々と一緒に討論、勉強、情報交換する場の提供を目指します。
 本研究にご興味のある方々は、研究分野、研究内容、業務内容、スキルレベル、その他の様々な違いがあっても特に問題がありません。「計算毒性学」はその特徴から、様々なバックグラウンドを有する方々に集っていただくことが重要です。少しでもご興味がありましたならば「計算毒性学」研究会に参加いただければと思います。
 研究会の活動内容や、詳細なスケジュール等はキックオフミーティング時および以降の会議や皆様からのご意見等を参考に、順次決定いたしまして「計算毒性学」研究会のネットワーク等に報告させていただきます。順次関連情報等は本ブログにても公表させていただきます。

 計算機毒性学研究会に参加ご希望の方は、以下の「計算毒性学研究会設立報告および参加のお願い」をご一読ください。本資料に書いてありますように、参加のご意向を連絡いただければ、手続きさせていただきます。

2022/01/25

HTSを取り囲む環境や状況は大きく変化しております:オートノマス(自律型)HTS
The environment and situation surrounding HTS have changed dramatically.

  創薬の効率を高めて、開発時間の短縮や精度を向上させるHTS(特に仮想)の役割は一層その重要さを増していると感じております。

 単にスクリーニングの速度や処理スループットの向上のみならず、HTSの適用分野も広がり、更にはHTSで使われる化合物自体も大きく変化しております。コロナが注目された初期には、既存の医薬品のコロナ治療薬への適用可能性を探るべく実施されたHTSは「ドラグリポジショニング」の典型的な適用事例となります。

 HTSは大量のスクリーニングデータを扱うことから、強力なデータサイエンス手法の適用や、場合によっては人工知能(AI)の適用が求められます。当初はデータサイエンスや人工知能の単なる適用、即ち従来手法の置き換えレベルにて実施されますが、より高度なレベルの要求に耐えるHTSの実現が求められるようになります。

 データサイエンスや人工知能の展開は急速ですが、これら技術の適用目的の先に見える最終形は、様々な判断や決断を伴い、これらを適切に解決しながら実施されるHTSとなります。このような形式は「オートノマス(自律型)」と称され、データサイエンスや人工知能の展開における最終形態となります。この「オートノマス(自律型)HTS」となれば、創薬の他の手法との組み合わせ等を行うことが可能となり、極めて高度で確度の高い創薬が実施可能となります。

 本ブログでは、この次世代型のHTS、すなわち「オートノマス(自律型)HTS」を目指した討論を実施してまいりたいと考えます。よろしくご支援お願いいたします。





2022/01/01

新年あけましておめでとうございます:

 新年あけましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いいたします。


新年のご挨拶






2021/12/15

Season's Greeting from the Insilico Data : Merry Christmas !

 ◇ メリークリスマス !!


 今年は、コロナに振り回されて日常の生活ペースをつかむことが困難な日々が続きました。

 来るべき年は通常の生活が取り戻せ、新たな研究目標に向けた活動を一日も早く取り戻すことを目指して頑張ります。

 ここ一年、今後の創薬研究のあるべき姿を模索してまいりました。世の中の流れとして、化学分野でもデータサイエンスや人工知能を取り入れて研究に活用する動きが強まり、この流れは一時的なものではなく永続的に続く動きと感じております。

 インシリコデータは今後の新たな研究の流れとして、データサイエンスや人工知能を強く、かつ総合的に活用する今後の研究スタイルとして「オートノマス(自律型)」研究を基本テーマとして活動してまいります。

 今後のインシリコデータの活動にご期待ください。また、ご支援のほどよろしくお願いいたします。




2021/01/03

2021年は飛躍と素晴らしい年となるように頑張ります:

  現在コロナ下での生活で、日常生活が大きく変化していますが、研究環境においてもWEBの適用による在宅勤務や授業と大きく変化しています。このような環境の変化に加えて、研究手法も大きく変化しています。

 インシリコスクリーニングの観点では、基本技術となるデータサイエンスや人工知能(AI)の進歩が急であり、今後数年でデータサイエンスや人工知能が研究対象とならずに、当然の基礎技術となることが予想されます。

 このような中で、株式会社インシリコデータは約15年前に開発されたKY法を出発点とし、時代の要求にこたえるKY法を開発してまいりました。この最新で強化されたKY法を用いる高速、高精度、自動化、メンテナンスフリーインシリコスクリーニングを目指して研究展開してまいります。

 今年度もよろしくご支援お願いいたします。

2018/05/29

今後インシリコデータは、AI-SHIPSウオッチャーとして活動致します

 インシリコデータはAI-SHIPSプロジェクトの一員として一年ほど精力的に活動しておりました。 AI-SHIPSプロジェクトは経済産業省(METI)の目玉プロジェクトとして、最近急速に展開されている人工知能(AI)技術を用いて、インシリコ技術による毒性評価を行なうプロジェクトとして発足致したものです。

 化合物毒性評価をインシリコで行なうための基本技術は「計算機毒性学(Computational Toxicology)」であり、最近急速にその重要性が高まっております。 また、計算毒性学は典型的な複合領域研究であり、様々な分野の研究が複雑に関与してきます。日本では、この研究を実施する研究室が存在しなかったのですが、インシリコデータの湯田はCBI学会に「計算毒性学研究会」を発足しました。 現在、4年目になりCBI学会中心にフォーカストセッション等を主催し、日本国での計算毒性学の普及を目指して活動しております。

 インシリコデータは前記AI-SHIPSプロジェクトに参加し、計算毒性学の適用に関する選考解析や意見交換、アドバイス等行なってまいりました。 しかし、このような提言やアドバイスがAI-SHIPSプロジェクトの事務方が設けた様々な制限事項により十分な形で実行できない状況となりました。 結果として、今後はインシリコデータとしてシステム構築等に関する提言をAI-SHIPSプロジェクト内では出来ない状況となりました。

 AI-SHIPSは国民の税金を用いた国のプロジェクトです。 インシリコを用いた化合物毒性評価には様々な技術の適用が必須です。 中途半端な状態で開発すると、毒性的にも、化学的にも、データ解析的にも、人工知能技術的にも様々な点で齟齬が出て、失敗プロジェクトとなり、国費の無駄遣いとなります。 このような事は防ぐことが必要です。

 上記の観点で、インシリコデータは今後AI-SHIPSウオッチャーとして、AI-SHIPS内部からではなく、外部から提言や様々な点検をし、議論等してまいります。 化合物毒性評価システムは、様々な技術を融合する事が必要な高度融合システムです。 大事な国費を費やして構築する国のプロジェクトが、中途半端な機能や化合物の誤認識や誤予測をするようなシステムとなることは防がなければなりません。 従いましてインシリコデータは今後、AI-SHIPSプロジェクトを外部から評価する正当な第三者機関として活動いたします。

 よろしくご支援いただきたく存じます。

湯田 浩太郎

2017/06/07

経済産業省(METI)による「人工知能を用いたインシリコ毒性スクリーニング」に関するプロジェクトが立ち上がりました:

 経済産業省(METI)が、「人工知能を用いたインシリコ毒性スクリーニング」に関するプロジェクト(AI-SHIPS)の立ち上げを行ないました。 本件はMETIにより公募案件となりました。 公募の結果、7機関が採択されました。

公募での事業は以下の内容となっており、それぞれについての実施プロジェクトが選考されます。
毒性発現メカニズムに基づく毒性評価技術の開発
(a) 薬物動態モデル等を活用した化学物質の体内動態評価技術の開発
(b) 細胞の化学物質応答性評価を基盤とする毒性評価技術の開発
人工知能を活用した予測モデルの開発(生体レベルでの毒性評価・予測を実現する情報技術の開発)
 

 以上からわかるように、①は毒性発現メカニズムに基づいた毒性評価技術関連の展開となっており、WET実験を伴うものです。 実際に人工知能を用いた毒性評価と評価システムの構築は②の項目で展開/実施されます。 
株式会社 インシリコデータは②に採択された明治薬科大学様の下でインシリコ関連のシステム関連業務に関与してまいります。

 インシリコによる化合物の毒性評価(予測)に関しては当初より化学多変量解析/パターン認識(ケモメトリックス)および人工知能関連技術(ルールベース型)が適用されて展開してきたという歴史があります。 現在はICTやビッグデータ、そして新たな人工知能技術の展開と、インシリコ関連技術を取り巻く環境は大きく変貌しています。 今回のプロジェクトにおいては、インシリコ関連環境の大きな変化を積極に取り入れ、時代の要求や期待に答えられるようなシステムの構築を目指してまいります。
 

2016/10/02

化合物の安全性評価と、最近の人工知能および化学多変量解析/パターン認識(ケモメトリックス)

  化合物の安全性評価や、インシリコスクリーニングに関する技術が大きく進歩しつつある。このように感じるのは、最近大きな話題になっている人工知能が様々な分野で急速に注目されるようになり、人工知能の適用が本研究分野に大きなブレークスルーをもたらすであろうという期待感が大きくなっているためと考える。


  もともと、化合物の安全性評価分野では人工知能技術の適用が積極的に行なわれてきた。 歴史的にみると、化合物の安全性評価は主として二種類のアプローチ(手法)が適用されてきた。一つは、多変量解析/パターン認識を適用するアプローチであり、残る一つが人工知能によるアプローチである。昔は、両方のアプローチが採用され、それぞれの機能的特徴を生かして展開されてきたが、最近では多変量解析/パターン認識手法が主体となっていた。これは、多変量解析/パターン認識がPCレベルでも支障なく扱えるようになり、またデータ解析手法も様々な手法が展開され、多種多様の安全性評価研究が出来るようになってきたことから、多変量解析/パターン認識手法が頻繁に適用される結果となっていたと考える。
 
  ここにきて再び人工知能手法が脚光を浴びてきたのは、情報に関するインフラの大きな変化があるためだろう。ICT、IoTさらにはビッグデータという言葉に代表されるような、従来とはスケールの異なるレベルでのデータの大規模化と多様性の拡大が大きな原因である。

  多変量解析/パターン認識を実施するとすぐわかるが、これらの手法では極めて大量のデータを扱う事はきわめて難しい。大数の変化や傾向をつかみ取る統計と異なり、多変量解析/パターン認識はそのデータ解析力が強いことから、サンプル中に潜むノイズに弱いのが特徴である。このため、データ量が多くなると、結果としてデータ中のノイズも増えてくるため、データ解析が切れ味の悪いものとなってしまう。

  このようなデータ量が急速に増大しているというインフラの大きな変化が、人工知能への期待度を急速に大きくしていると考える。また、人工知能自体も深層学習(ディープラーニング)という新たな機械学習法が開発され、画像処理や音声認識等の分野で素晴らしい成果を上げた。この事実から、ICT、IoTさらにはビッグデータで代表される新時代の要求に答える技術として、人工知能が期待されている。

  深層学習で代表される新時代の人工知能技術が、化合物の安全性評価問題に大きなブレークスルーを与えることが期待されるが、これが本当に実現するか否かは、今後の展開にかかっている。